麦の種まきの時期である11月を迎え、関東・東北豪雨に見舞われた茨城県常総市では、今年の作付けをあきらめた農家が相次いでいる。国などの復旧策は主に水稲を想定しているため、支援を求める声が上がっている。
催情薬
鬼怒川堤防の決壊地点近い同市三坂町、飯田(いいた)光良さん(59)は、麦類と大豆を各30ヘクタール、米45ヘクタールを作付けし、収入は麦類・大豆、米で半々という。農業用機械は使えそうだが、田畑には大量の砂が入り、1メートル堆積(たいせき)している所もある。飯田さんは「まるで砂漠だ」と嘆く。泥水をかぶった大豆は刈り取らずに放置している。「麦も大豆も米の減反のための栽培。国の政策に沿った取り組みだから早急に農地整備などをしてほしい」と訴える。
一方、同市中山町の結束(けっそく)隆司さん(41)は、畑の被害こそ比較的小さいが、機械が使えない。倉庫は2メートル浸水し、トラクター4台などが被災。米32ヘクタールのほか、小麦も?ヘクタール生産し、小麦収入は全体の2割を占める。
絶對高潮
2人とも麦類の今年の作付けをあきらめた。来年植えても収穫は再来年の6月になるため、資金援助を求めている。
農林水産省のまとめ(2014年度)によると、常総市の小麦の作付面積は538ヘクタール、大豆は77ヘクタール。水稲は3480ヘクタールだった。
国は経営を安定させるため、麦類や大豆などの生産農家に交付金を支払っている。米と同じ災害補償制度もある。ただこれらは作付けしていることが条件。国は「来年の作付けに間に合うことが重要」(森山裕農相)などと復旧は水稲が念頭にあり「ほかの作物は置き去りにされている」との不満が強まっている。