タクシー業界の過当競争対策で国が初乗り運賃を引き上げた措置をめぐり、大阪市の格安タクシー会社「ワンコインドーム」が営業の自由の侵害だとして国を訴えた行政訴訟の判決が20日、大阪地裁であった。西田隆裕裁判長は「一律の運賃幅設定にあたり、格安業者の個々の事情を考慮しなかったのは裁量権の逸脱・乱用」と判断。運賃変更命令や事業許可取り消しをあらかじめ差し止めた。
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同様の訴訟は「エムケイ」(京都市)グループ4社と「壽(ことぶき)タクシー」(大阪府東大阪市)の同業5社も大阪地裁に起こし、福岡地裁で「福岡エムケイ」「BLUE ZOO」(いずれも福岡市)、青森地裁でも「幸福輸送」(青森市)の計3社が争っており判決は初めて。国のタクシー規制のあり方が問われそうだ。
ワンコイン社は2004年、初乗り2キロ500円で新規参入した。ところが昨年1月、改正タクシー適正化・活性化特別措置法の施行により、タクシーが多い地域では国の定めた範囲内の初乗り運賃(公定幅運賃)が義務化され、大阪の中型タクシーは初乗り660~680円と決まった。
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しかし、ワンコイン社は初乗り500円(消費増税で現行510円)で営業を継続。近畿運輸局の是正勧告を拒んだ。行政処分が予想されたため、それらを事前に差し止めるよう求めて提訴。仮処分も申し立て、西田裁判長は昨年7月の決定でこれを認めた。
判決は、公定幅運賃制度の導入には安全性や労働条件の悪化を防ぐ目的があり、運賃幅の設定は国に一定の裁量権があると指摘。しかし、営業の自由を「相当程度制約する」と述べ、格安で運行する業者の運賃や経営実態も考慮すべきだったと批判した。
さらに、公定幅を下回る運賃を認めても、ただちに値下げ競争や安全性の低下を招くとはいえず、国が一方的に狭い範囲の公定幅を定めた措置は「裁量権の逸脱・乱用」と判断した。
原告側の「公定幅の導入は憲法の保障する営業の自由を侵す」という主張には直接判断を示さず、あるべき公定幅の決め方という観点から違法判断を導いた。