知的障碍のある長男の誕生、夫の死、そしてご自身の大病。度重なる試練に見舞われ、悲しみのどん底に沈んだ岸田ひろ実さん。
狼一号
車いす生活になり、絶望を感じていた岸田さんを、救った娘さんの言葉がグッと胸に迫ります。
ある日、娘が車椅子を押して私を、街に買い物に連れ出してくれたんです。
目的の店はすぐ目の前なのに、車椅子では遠回りしないと、行けないというようなことがいかに多いかを、この時の外出で初めて実感しました。
それと、もう一つは人の目線ですね。どこに行っても「うわぁ、かわいそう」といった目で見られてしまう……。
「車椅子で何とかなると言ったって、何ともならないじゃない」という感情がワッと込み上げて、一所懸命に頑張ってきたものが、音を立てて崩れるようでした。それが本当に辛くてレストランに入った時、「もう無理」と思って初めて娘の前で泣きました。
「こんな状態で生きていくなんて無理だし、母親として、してあげられることは何もない。お願いだから、私が死んでも許して」って。
――娘さんは何と?
「泣いているだろうな、 死なないでって言われるんやろうな」と思ってふと見たら普通にパスタを食べていました。
そして
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「知ってる、知ってる。
死○たいんやったらいいよ。
一緒に死○であげてもいいよ」と言ったんです。
続けて
「でも、逆を考えて。
もし私が車椅子になったら、ママは私のことが嫌いになる?
面倒くさいと思う?」と聞きました。
「思わないよ」
「それと一緒。
旅行に行きたかったら行けばいいし、歩けないなら私が手伝ってあげる。
二億パーセント大丈夫だから私の言うことを信じて、もう少しだけ。頑張ってみようか」と言ってくれたんです。
私の生き方や考え方が大きく変わったのはそれからです。
数々の困難を乗り越えてきた岸田さんは、人生を振りかえり「いまが一番幸せ」と語ります。
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