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ゆっくりと上体を起こし、ベッドの外へ視線をやる

ぼくらは勢い良く走り出した。視界の流れは鈍く、まるで水に埋もれた世界を走っているような、そんな感触だった。脚の運びが妙に鈍重に思え、目の前に延々と広がるストレートも、入道雲のそびえ立つ夏空も、絶え間なく吹きつける島風も、世界のすべてがただのっぺりと引き延ばされて――そして、突然それは足元に現れた。

野球の、ボールだった。道端で遊んでいた子どもが取りこぼしたのだろう。彼女の遠い声がして、ぼくはようやく我に帰った。それはもう、遅すぎるくらいに遅すぎたのだけれど。嫌な夢を見た。全身が脂汗でじっとりと滑っている。目を開くといつもの大きな影が今にも覆い被さってきそうなくらい近くに見えた。事実、それは視界の大半を淡々と覆い尽くしていた。――なんのことはない、二段ベッド上段の底板だ。

しかしかれこれ一年以上も同じような場所で寝ているというのに、突然こんな風に差し迫った窮屈さを覚えるなど馬鹿げている。きっとまたネガティブになり過ぎているせいだろう。それだけのことだ。小さく頭を振って、気を強く持ち直す。そしてゆっくりと上体を起こし、ベッドの外へ視線をやる。

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中山雅史
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