いくつか有望なワクチンが開発途中にあるが、いずれもエイズを予防できる可能性を示したもので、エイズを引き起こすウイルス(HIV)感染者を治療できるものではなかった。また、投薬と骨髄移植を組み合わせることで根治できる可能性があるが、まだ本格的な治療に発展できるかどうかは未知数だ。
今回、米オレゴン健康科学大学を中心とした研究チームがエイズを発症させるHIVに似たウイルスを感染させた猿に対して新しいワクチンを投与することでウイルスを体内から長期間除去させることに成功した。この研究成果は8月11日付のNature誌に掲載された。
今回新しく開発されたワクチンは、サイトメガロウイルスという別のウイルスを基としている。このウイルスはもともと各種のヘルペスを発症させることで知られているが、このワクチンでは毒性をなくし、その強い感染性のみを利用して、身体の免疫系に対してエイズウイルスに攻撃するよう働き掛ける。つまり、「ウイルスを以てウイルスを制する」やり方だ。
今後は人間に対しても、同じ方法でワクチンを開発し、HIV感染者に対してテストする予定だという。人間に対するワクチンの安全性や治療効果については未知数な部分があるが、HIV感染とエイズ発症の根治に向けて、この方法は有望な方法だと期待されている。